ウェブ業界からパタっとなくなった「オフショア開発」のお誘いと、急増したフリーランス
- 優介 前田
- 1 日前
- 読了時間: 9分
ここ数年、日本のウェブ業界やIT業界の方は肌感覚として「色んなことが大きく変わったなぁ」と感じている方が多いのではないでしょうか。
最も大きいのはAIの台頭。
これにより開発体制を大きく変えている企業も少なくありません。
その流れで一緒に働く仲間たちの顔ぶれも変わり、
使っているサービスもAdobe一択ではなくなりました。
細かいところでは日々届く営業メールの内容にも変化があり、取り巻く環境は、2010年代とは全く異なる様相です。
数年前まで「オフショア開発」のお誘い、たくさんありませんでしたか?
「オフショア開発」とは何か?

オフショア開発とは、システムやウェブサイトの開発業務を、自国よりも人件費の安い海外の企業やエンジニアに委託することを指します。コスト削減や、国内で不足しているIT人材を確保するための手段として、古くから活用されてきたビジネスモデルです。
これは制作会社や開発会社の規模の大小関係なく、少し前まで日本のIT業界にとってオフショア開発は「当たり前の選択肢」でした。
中には日本の法人が開発拠点を海外に構えるケースもありました。
2010年代:「安い海外」へ発注し続けたウェブ業界の功罪
東アジアや東南アジアから毎日のように届いていたオフショア開発のお誘い
2010年代を思い返してみましょう。
当時、ウェブ制作会社やシステム開発会社の問い合わせフォームには、毎日のように海外からの営業メールが届いていました。中国、ベトナム、フィリピン、インドなど、東アジアや東南アジアの企業から「日本の半額以下で、高品質な開発が可能です」といった内容です。
2010年代初頭は今のようなAIは存在しておらず、翻訳アプリの精度も高くありません。
拙く、文法的にもおかしな日本語のメッセージを受信することが少なくとも2~3日に一回はありました。
そんなメールを目も通さずゴミ箱に送る日々を経て、
ふと数年ぶりにメールを開けてみるととてもキレイな日本語文面で営業されている。
そんなことを目にしてきた2010年代でした。

これは小さな制作会社だけの話ではなく、
大手の制作会社や開発会社も同様でした
これは決して、コストを抑えたい小規模な制作会社だけのことではありませんでした。
大手の制作会社やSIerも、海外に開発拠点を設けたり、現地のパートナー企業と提携したりしました。
大手の開発会社に勤める友人と呑みに行っても「海外の開発も依頼している」話を聞くこともありました。
「日本人と比べてどう?」と聞くと
👨『ほんとに指示書通りにしか上がって来ないから、結構大変。』
そんな風に言っていたのを思い出します。
安価で豊富な労働力を活用することで、数多くのウェブサービスやアプリがスピーディーに世に生み出され、結果として日本のIT産業の拡大やGDPの向上に大きく貢献したことは事実と言っていいでしょう。
失われたモノとコト
しかし、光があれば影もあります。
海外へ発注し続けたことで、日本が失った「モノ」と「コト」がありました。
ひとつは「技術の空洞化」と考えています。
「設計やディレクションは日本人がやり、手を動かすコーディングやプログラミングを海外へ投げる」分業が定着した結果、日本国内の若手クリエイターが現場で重要な部分を担う機会が少なかったと言えます。

もうひとつは「デジタル赤字」です。
財務省等の国際収支統計によると、IT業務委託やクラウドサービス利用料などを含む日本の「デジタル赤字」は、2023年に約5.5兆円、2024年には約6.7兆円を突破しました。10年前と比較すると3倍以上に膨れ上がっており、猛烈な勢いで国内の資金が海外へ流出しています。
「海外で開発した日本人向けのウェブサービス」でも盛況すれば全体としてOK、という見方もあります。
例えば開発費に1000万円かけて1万円のウェブサービスを1万人に提供したとしましょう。
この時、GDPとしては1億円分の効果がありますがデジタル赤字は1000万円です。
開発業務は受託側に対価とともに技術ノウハウが残るものですので
海外に委託していたこの部分が培われてこなかったもの、と考えることができるでしょう。
そうして私たちが使っているサービスは自分たちが生み出したものがどんどんなくなっていき、海外のものばかりとなっています。
AdobeやFigmaはアメリカ企業のサービス。Canvaはオーストラリアの企業のサービス。
instagramやXもアメリカ。AppleやMicrosoftのOSを使って、OpenAIやGoogleのサービスを使い情報を調べています。

2020年代:世界的なインフレがもたらした逆転現象
なぜ海外からのオフショア営業は「ピタッ」と止んだのか?
2020年代に入り、世界的なインフレに伴って状況は静かに変わりました。
毎日のように届いていた海外からのオフショア開発の営業メールが、パタっと鳴りを潜めました。
新興国の経済成長と物価上昇により、彼らにとって円建てで日本の仕事を受注することは、もはや何の旨味もないビジネスになってしまいました。
コストメリットという前提が崩壊し、日本のウェブ業界が「安いから海外に頼む」ことも徐々に減っていきました。
一方、日本人フリーランスからの営業メールは増加
コロナ禍を経てフリーランスという働き方が普及したこともあり、海外からのメールが消えた代わりに、日本のフリーランスクリエイターからの「パートナー提携(お仕事探し)」の営業メールが制作会社にはたくさん届くようになりました。
「働き方改革」という言葉とともにコロナ禍におけるリモートワークは一般化し、正社員として働くだけでなくフリーランスとして働いていく人がとても増えたことによるものかと思います。
実際、公的なデータを見てもその増加は明らかです。
総務省が2022年に実施した「就業構造基本調査」では、本業をフリーランスとする人が「209万人」にのぼることが公的統計で明らかになりました
(副業を含めると内閣官房の推計で400万人を超えます)。
さらに、国税庁が発表した令和5年(2023年)分の確定申告状況によれば、インボイス制度の導入に伴い、消費税の申告を行った個人事業主の件数は前年比で「86.9%増(約197万件)」と増加しました。これは、これまで数字として表れにくかったフリーランス層がいかに分厚く、国内で活動しているかを示す象徴的なデータと言えます。
これだけ多くのクリエイターが国内市場で仕事を奪い合っているのですから、制作会社への営業メールが急増するのも当然の結果と言えるでしょう。

私たちは何をすべきか?
「日本は貧しくなった」
そんな悲観的な声も聞こえてきます。
確かにマクロ経済で見れば「安い日本」の状況なのかもしれません。
しかし視点を変えれば、これは私たち日本のクリエイターにとってもチャンスでもあります。円安であるということは、海外の企業から見れば「割安で日本のクリエイターに依頼できる」という競争力になりうるからです。
「できるだけ安く発注したい」のは万国共通です。
突出した技術や認知度が無いクリエイターは信頼関係を積み上げていかなけばなりません。
そのために「はじめのお付き合いはお試し価格で」という営業手法をとっている方も少なくないでしょう。
しかしそれは金銭感覚が一致している関係で成立する話で、金銭感覚が自分よりもひとつ上の相手と仕事をすると「自分にとって納得いく金額」と「相手にとって満足いく金額」が一致します。
つまり「相手にとってのお試し価格」が「こちらにとっては受注したい金額」になるわけです。
これの最もわかりやすいのが「物価が違うところで仕事をする」ということです。
例を挙げてみましょう。
仮にオーストラリアの企業からウェブ開発業務を$5,500で受託できたとします。
2026年3月現在のオーストラリアドルのレートは$1 AUD = 113.5円 JPY です。
日本円で換算すると約62万4,000円の売上に相当する受注額です。
物価も踏まえてオーストラリア現地の人がこの額に対してどういう印象を持つかも考えてみましょう。
オーストラリアの企業にとっての「$5,500」は、日本人が62万円を支払うのとは全く重みが異なります。
日本 | オーストラリア | |
最低賃金の違い | 平均最低賃金 時給1,050円 | 時給$24.95 (日本円で約2,800円) |
物価の違い | カフェでのランチが 1,000円~2,000円 ペットボトルの水が 150円 | カフェでのランチが 2,500円~3,500円 ペットボトルの水が 400円近く |
[最低賃金の違い]
日本の平均最低賃金である1,050円の3倍近くの違いがあります。
[物価の違い]
日本でも場所によりますが1.5倍~2倍程度の感覚の違いがあります。
これを踏まえて倍近くの人件費の違いがあるオーストラリアの企業目線で$5,500でエンジニアやデザイナーに発注しようとすることを日本人の金銭感覚に直して考えてみると
「だいたい25万円~30万円くらいで、サクッと作ってくれないかな?」
という感覚の案件であると想定できます。

外貨獲得していける
日本のクリエイターが待遇と技術力を底上げする
これから日本に求められるのは、かつてのように海外へ仕事を投げることではありません。
私たち日本のクリエイター自身が、世界の企業から直接仕事を受注する「オフショア開発の開発元」になっていくことです。
「逆オフショア」「リバースオフショア」と呼ばれています。
事実、インドはIT分野において「海外からの受注(外貨獲得)」を推進し、自国の技術力と経済力を劇的に向上させてきました。
インドのIT業界団体(NASSCOM)の発表によると、2023年度のIT・ビジネスサービス関連の輸出額は約1,940億ドル(約29兆円)に達しています。
「安価なオフショア先」として世界中の開発を請け負ってきたインドは今やGoogleやMicrosoftなど世界的IT企業のトップを輩出するまでになっています。
近年ではポーランドやルーマニアといった東欧諸国もアメリカなどからのITアウトソーシングを積極的に受注し、外貨を獲得できるITエンジニアの平均給与は他業種の2~3倍以上に達する例も報告されています。
「外貨を稼ぐクリエイター」がいかにして自分たちの生活を勝ち取っているかを証明しています。
海外の企業に直接営業をかけ、外貨を稼ぐ。
この流れを作ることができれば、フリーランスの単価や待遇は劇的に改善します。
そして何より、世界基準の厳しいプロジェクトに最前線で挑むことで、日本の開発技術力は再び力強く底上げされるはずです。
10年以上前、拙い日本語で届いていたあの営業を今度は私たちがおこなっていく番です。

国境を越えて「シゴトで遊ぼう」
個人では難しい海外案件も、チームなら突破できる
とはいえ「今日から海外営業をして、英語で契約を結んで納品し、外貨で対価をもらってください」と言われて、一人で完結できるフリーランスはごく僅かでしょう。
言語の壁、法務の壁、税務の壁、そして技術の壁。
一人で立ち向かうには、海外案件はあまりにもハードルが高いのが現実です。
だからこそ「チーム」が必要なのです。
Honmonoが掲げるテーマは「共創」です。
翻訳ができる人、海外の商習慣に強いディレクター、圧倒的なビジュアルを作るデザイナー、そして確かな技術を持つエンジニア。多様なスキルを持ったメンバーが集まれば、個人では絶対に不可能な海外プロジェクトも、チームとして突破していくことができます。
私たちが目指すのは、単なる下請けではなく、世界を相手に対等なパートナーとして価値を提供すること。
Honmonoでは現在、共に世界市場へ挑むための「英語や多言語を話せるメンバー」や「海外志向を持つクリエイター」を求めています。
世界を舞台に、私たちと一緒に「シゴトで遊んで」みませんか?

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