クラウドソーシングだけで稼ぐことの危険性と実態:フリーランス新法の視点から考える
- 笑美 川崎
- 9月17日
- 読了時間: 7分
「クラウドソーシングだけでフリーランスとして生活したい」と考える方は少なくありません。場所や時間に縛られず、案件を選んで働ける魅力的な環境に見えます。
しかし現実はそう甘くはなく、低単価案件や買い叩き、さらには搾取的な取引条件に巻き込まれる危険性が潜んでいます。
特に2023年に施行されたフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化法)は、こうした不当な取引を防ぐために導入されました。
本記事では、クラウドソーシングをめぐる実態と、実際に起こった問題事例、さらに新法で禁止される「買い叩き」の具体例を交え、フリーランスが生き残るための戦略を深堀りしていきます。
クラウドソーシングの危険性
1. 低単価案件の氾濫
クラウドソーシングサイトには「初心者歓迎」と謳いながら、相場を大きく下回る案件が数多く出回っています。ライティングでは1文字0.5円、デザイン案件で1点500円といった報酬設定が代表例です。これでは数時間の労働を重ねても時給換算で数百円となり、最低賃金すら割り込むケースが珍しくありません。フリーランスを志す人にとって「数をこなせば稼げる」という幻想に陥る大きな要因です。
事例:駆け出しライターの苦境
ある駆け出しのフリーランスライターは、クラウドソーシングで「初心者歓迎」の案件を大量に受けました。しかし、1記事500円の案件を10本納品してもわずか5,000円。取材やリサーチ、執筆にかかる時間を考慮すると、時給は数百円にしかならず、結果的に心身をすり減らして挫折してしまいました。
2. 買い叩きの実態
発注者がフリーランスの立場の弱さを利用して、相場より大幅に低い報酬を提示する行為が横行しています。特に大手企業がクラウドソーシングを利用する場合、「安く大量に」という発注スタイルが主流となり、フリーランスは安価で労働力を提供させられる状況に追い込まれます。結果として、生活が不安定になるだけでなく、業界全体の相場が下落する悪循環に繋がっています。
事例:WELQのコンテンツ問題
かつて大手IT企業が運営していたメディアで、大量の低品質記事が公開されていた事件がありました。その裏側では、フリーランスライターが低単価で大量執筆を求められていたのです。企業側は短期的なコスト削減を狙ったものの、結果としてブランドの信頼を大きく失い、メディア閉鎖という事態に発展しました。
3. 搾取案件の見極め方
フリーランスがクラウドソーシングを利用する際、最も重要なのは「案件を見極める力」です。以下の点に注意しましょう。
・報酬の相場を知る:ライティングであれば1文字1円以上、デザインなら数千円〜数万円が一般的な相場です。相場を大きく下回る案件は避けましょう。
・クライアントの評価を確認する:プラットフォームには過去の取引評価が表示されます。低評価が多いクライアントは注意が必要です。
・仕事内容の明確さ:要件が曖昧だったり「経験を積むために」といった言葉で低単価を正当化する案件は「やりがい搾取」の典型です。
事例:デザイナーのトラブル
あるデザイナーは、クラウドソーシングで「ロゴ1点500円」という案件を受注しました。
納品後、修正を何度も求められた結果、労力は数万円相当。しかし報酬は500円のまま。これが典型的な搾取案件です。
実際に起こった問題の事例
WELQ問題
大手IT企業が運営するキュレーションメディアWELQに掲載される予定の記事制作案件がクラウドソーシングで募集され、低単価で大量のコンテンツをフリーランスライターに依頼。その結果、誤情報を含む質の低い記事が量産され、最終的にメディア閉鎖という社会問題へ発展しました。クラウドソーシングを通じた「安く早く」の発注が、企業ブランドの毀損に繋がった典型例です。
クラウドワークスにおける低単価案件
「初心者歓迎」と銘打った1記事500円程度の案件が多数存在します。多くのフリーランスが参入しやすい反面、生活を成り立たせるには膨大な時間を要し、スキル向上の機会も奪われる構造になっています。これに依存することは極めてリスクが高い働き方です。
フリーランス新法で禁止される「買い叩き」事例
フリーランス新法は、フリーランスが不当な条件で働かされることを防ぐために制定されました。具体的には以下のような行為が禁止されています
1. 不当に低い報酬の設定
相場が1万円の案件に対し、発注者が「5000円でやってほしい」と提示するケース。市場価格を無視した一方的な報酬設定は法律違反に該当します。
2. 一方的な報酬の減額
契約時に1万円と決めたにもかかわらず、「予算が厳しい」として後から8000円に減額する行為。フリーランスの合意なしでの減額は買い叩きにあたり禁止されています。
3. 不当な返品要求
納品物に重大な瑕疵がないにもかかわらず、「期待と違う」と返品を要求し、報酬を支払わないケース。これもフリーランス新法が禁じる行為です。
4. 購入・利用の強制
「この案件を受けるには専用ソフトを買ってください。その費用は自己負担で」と発注者が条件を課す場合。発注のために不必要な出費を強要するのは違法行為です。
気をつけたい点としては「見るから、初見でわかるほど怪しそうな人」だけがこういった要求をしてくるわけではないことです。誠実な受け答えをする方や、気持ちよく初回の取引を終えた方であっても「悪意なく」「知識なく」「わざと」「立場上仕方なく」様々な理由でこうした不当な要求をされることがあります。

クラウドソーシングを正しく使う戦略
クラウドソーシングを完全に否定する必要はありません。正しく活用すれば、スキルを磨き、クライアントとの出会いを得る場として役立ちます。そのためには、以下の戦略を取りましょう。
1. ポートフォリオを作る
最初は低単価案件で経験を積むこともありますが、それを「ポートフォリオ作成の投資」と割り切り、徐々に高単価案件にシフトしていきましょう。
2. 直契約へのステップアップ
クラウドソーシングで実績を作ったら、次は直接契約に挑戦するのが理想です。SNSやブログで自分の活動を発信し、クライアントから声をかけてもらえる流れを作ることが大切です。
3. 単価交渉を恐れない
報酬が低い場合は「相場に合わせていただけますか」と交渉してみましょう。交渉に応じないクライアントは、その時点で長期的な付き合いを避ける判断ができます。
まとめ
クラウドソーシングは、フリーランスにとって手軽に案件を得られる魅力的な仕組みですが、同時に低単価・買い叩き・搾取案件という大きなリスクも存在します。
重要なのは「依存しすぎない」こと。
相場を知り、案件を見極め、自分の価値を高めることが、フリーランスとしての成功につながります。クラウドソーシングは入り口であり、最終目的地ではありません。
スキルを磨き、信頼を積み重ね、自由で持続可能な働き方を築いていきましょう。
フリーランスという働き方は、自由で魅力的である一方、孤独や不安を感じやすいのも事実です。案件の選び方や価格交渉、キャリア形成の悩みなど、一人で抱え込むと行き詰まってしまうことも少なくありません。
そんな時に大きな支えになるのが「仲間の存在」です。実際に同じように活動しているフリーランスやクリエイター同士で情報交換をしたり、相談できたりするだけで、安心感や次の一歩を踏み出す勇気につながります。
私たちのコミュニティでは、ライター・デザイナー・エンジニアなど、さまざまな分野のクリエイターが集まり、お互いの知見をシェアしています。
「こんな案件にはどう対応してる?」「価格交渉はどうしてる?」といったリアルな情報が得られるのは、同じ立場の仲間がいるからこそ。
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